第3回 リーダーシップは“自然体”でいい 〜等身大の一歩から始めるリーダー像〜

■ はじめに:「自分にはリーダーシップがない」と思っていませんか?

「私は人前に立つのが苦手なので、リーダーは無理です」
「カリスマ性がないから、リーダーには向いていないと思います」

これは、実際に私が若手社員や中堅社員から聞いた言葉です。
多くの人は、「リーダー」という言葉に対して、強くて、自信に満ちあふれた“特別な人”をイメージします。

しかし、果たしてそれは本当でしょうか?
リーダーシップとは、本当に“人を引っ張る力”だけなのでしょうか?

本記事では、「自然体で発揮するリーダーシップ」に焦点を当て、
誰もが今日から取り組めるリーダー像を、一緒に探っていきます。


■ リーダーシップは「行動」であって「肩書き」ではない

「リーダー=役職者」というイメージが根強くありますが、
近年の組織論では、リーダーシップは役割でも地位でもなく、“ある種の行動”であると捉える考え方が主流になっています。

心理学者のダニエル・ゴールマンは、「リーダーシップとは、感情に働きかけ、人を動かす力である」と述べています。
つまり、リーダーとは「決断を下す人」や「組織を導く人」だけでなく、
“その場の空気を前向きに変える人”や“誰かに一歩踏み出す勇気を与える人”でもあるのです。


■ 誰でもできる「自然体リーダーシップ」の行動例

リーダーシップは特別な才能ではなく、「小さな行動の積み重ね」です。
以下に、日常の中で誰もが実践できる“自然体リーダーシップ”の具体例をご紹介します。

行動 リーダーシップの種類
会議で話せていない人に「○○さんはどう思いますか?」と声をかける 包括型(インクルーシブ)リーダーシップ
部署を超えて助けを求めた人に「一緒に考えようか」と言う 支援型リーダーシップ
トラブル時に「まず私がやってみるよ」と動く 示範型(Lead by Example)リーダーシップ
空気が重いときに「ちょっと休憩しませんか?」と提案する 感情的知性に基づくリーダーシップ
経験の浅い後輩に「私も最初は同じだったよ」と声をかける 共感型リーダーシップ

どれも“普通の人”が、自分の言葉で、自分のタイミングでできることです。
でも、その行動が場を動かし、人を動かし、信頼をつくる。それこそがリーダーシップです。


■ リーダーシップのハードルが高く感じる理由

では、なぜ多くの人が「自分にはリーダーシップがない」と思ってしまうのでしょうか?

理由はシンプルで、「リーダー=カリスマ性」「リーダー=自信満々」という誤解があるからです。

  • リーダーは前に出てスピーチをしなければいけない

  • 全員の先頭に立って旗を振る人だけがリーダーだ

  • 感情を表に出さず、冷静に判断するのが理想の姿

こういった“理想像”に縛られてしまうと、「自分には無理だ」と思ってしまいます。
でも実際は、人前で話すのが苦手でも、感情が表に出ても、立派なリーダーになれるのです。


■ 「自然体のリーダー」が持つ3つの特長

それでは、「自然体のリーダー」とは、どのような人物なのでしょうか?
特長を3つに整理してみます。

① 自分の言葉で話す

たとえば、部下に何かを伝えるとき、正論やスローガンではなく、
「私はこう思っている」「自分も同じ失敗をしたことがある」など、自分の体験を込めた言葉で話す人は、聞く人の心を動かします。

② 感情を隠さず、むしろ見せる

嬉しいときは喜び、悔しいときは悔しがる。
そういった感情を隠さず表現できる人は、周囲の共感を得やすくなります。
“共にいる感じ”が、安心感と信頼を生むのです。

③ 完璧を目指さず、誠実であろうとする

自然体のリーダーは、「自分はリーダーとしてどうあるべきか?」よりも、
「今この人たちとどう向き合うか?」を大切にします。
失敗しても正直に伝え、謝る勇気がある人の方が、長く支持される傾向があります。


■ リーダーシップは“役職”ではなく“現象”である

「リーダーシップ=上司の仕事」と思われがちですが、実はそうではありません。
誰かが誰かの背中を押した瞬間、その人はリーダーシップを発揮しているのです。

心理的安全性が高い職場には、「非公式のリーダー」がたくさんいます。
声がけが上手な人、雰囲気を和らげる人、まとめ役ではないけれど信頼されている人。
そうした存在が、チームを支え、組織を強くしているのです。


■ 管理職ではなくてもリーダーになれる時代へ

これからの時代、リーダーシップは特定の人だけに求められるものではありません。
むしろ、一人ひとりがリーダーシップを“共有”していく組織文化こそが、変化に強いチームをつくります。

  • 若手でも、正社員でなくても、リーダーシップを発揮できる

  • 「支える」「見守る」「信頼する」といった行動にも価値がある

  • マネジメントとは異なる“影響力のかたち”を、みんなが持てるようになる

こうした視点が広がっていくことで、「管理職にならないとリーダーになれない」という思い込みから、私たちは自由になれるのではないでしょうか。


■ おわりに:あなたが誰かの“一歩”を支える人になる

リーダーであることは、必ずしも“前に立つ”ことではありません。
むしろ、誰かの後ろから「大丈夫、いけるよ」と声をかける人が、本当のリーダーなのかもしれません。

あなたが今日、誰かにかけた一言が、
誰かを助けたその行動が、
チームを動かす小さな“うねり”になる可能性は十分にあります。

自然体でいい。完璧じゃなくていい。
一歩ずつ、等身大で進んでいく。
それが、これからの時代に必要なリーダーシップのあり方だと思います。

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